第1章 樹への想い プロジェクトオーナー河尻和憲
― 運命的な出会い ―
広葉樹については詳しくなった。
詳しくなればなるほど、もっと多くの人に知ってもらいたいという想いが募った。
しかし、製材して天然乾燥させている木材を、どうしたら活かすことができるのか・・・。
そんなときに出会ったのが、化粧品会社の什器や空間デザインも手掛けていた家具デザイナーの山本さんだ。
東京から岐阜に会いに来てくれた。
積み上げられた材を見つめて、立ち尽くし、ぽつりと言った。
「木が語りかけてくるようで圧倒された」
運命的な出会いだった。
― モクターブ・プロジェクト ―
私と山本さんが手さぐりで始めた家具作り。
そこに大きな援軍が現れた。家具プロデューサーの大澤勝彦さん。
岐阜の広葉樹を使う。高山の家具職人の技術を最大限に発揮してもらう。
そんな想いを共有しつつ、家具プロデューサーが加わることで
本格的なビジネス・プロジェクトの立ち上げとなった。
木が奏でる音楽のような調和を暮らしの中で楽しんでもらいたいという想いを、MOCTAVEには込めている。
― 常識破りの家具作り ―
デザインは家具にとって最も重要な要素である。
何度も試作を重ね、多くの人からレビューを受け、それを繰り返しながらデザインが練り直された。
そうしてようやく思い描いたデザインに到達することができた。
ただ、そのデザインは家具作りの常識とは、かなり異なったものである。
普通の家具は大径木の木材で、できる限り工程数を少なくして効率的に作る。
そうしなければ、採算が取れないからだ。
しかし、モクターブ・プロジェクトが行きついたデザインは
効率化とコストを優先する家具作りから見れば常識破りだ。
この家具は小径木の木材も多く使い、広葉樹が持つ驚くほど多彩な表情を取り入れる。
だから工程数は普通の家具の何倍にも達する。
それほどに手がこんでいるし、作り方も難しい。
― コンセプトと信念が共鳴した ―
MOCTAVEの製造は高度な技術が要求され、高コストも予測される。
やはりこのプロジェクトのコンセプトに共感してくれる作り手でなければ・・・。
そうして多くの家具職人さんたちに試作を依頼した。
MOCTAVEに共感して担ってくれる家具職人さんたちは、一人が一つの家具を責任をもって手掛ける。
そうした作り方を信念にしている人たちに出会うことができた。
そして不思議なことに、みな高山の家具職人でありながら
全国各地から家具を作るために高山に移り住んできた人たちだ。
しかも誰もが木と樹のことが大好きで、その魅力も難しさも知り尽くしている。
家具 ・ インテリアショップ MOCTAVE | 東京・代官山